求人票に月給23万円と書いてありました。それを見て、手が止まったんです。この23万円は、保育士として高いのか安いのか。10年働いていたのに、判断できませんでした。
調べると「保育士の平均年収は396万円です」と、どのサイトにも同じことが書いてあります。でも私が知りたかったのは、そこではありませんでした。目の前にあるこの求人が、その平均より上なのか下なのかです。
この記事では、国が毎年集計している数字を使って、保育士の給料が実際にいくらなのかを出します。平均だけでなく、下から4分の1の人がいくらもらっているか、年齢や経験年数でどれだけ変わるかまで並べます。
先に書いておきます。保育士の給料は平均で月27万円です。ただしこの数字をそのまま自分と比べると、たいていの人は落ち込みます。理由は記事の中ほどで説明します。
保育士の給料は平均で月27万円です
まず全国の数字です。厚生労働省が毎年おこなっている賃金構造基本統計調査から、保育士だけを取り出しました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| きまって支給する現金給与額 | 271,400円 |
| 所定内給与額 | 264,400円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 712,200円 |
| 推定年収 | 396.9万円 |
| 平均年齢 | 38.0歳 |
| 平均勤続年数 | 8.5年 |
| 集計された人数 | 2万7,416人 |
聞き慣れない言葉が2つ出てきたので、先に説明します。
きまって支給する現金給与額は、毎月支払われるお給料のことです。残業代や通勤手当も入っています。ここから税金や社会保険料が引かれる前の金額なので、手取りではありません。
所定内給与額は、そこから残業代などを抜いた分です。271,400円と264,400円の差、つまり7,000円が残業代などにあたります。
推定年収は、毎月のお給料を12か月分にして、賞与を足したものです。統計に年収そのものの項目がないので、この方法で出しています。
保育士え、残業代が7,000円…? うちの園、そんなもんじゃないんだけど



これは全国の平均なので、残業が少ない園も含まれています。ご自身の残業代と比べたい場合は、都道府県別の記事に地域ごとの数字を載せています。
この27万1千円に、何が入っていますか?
求人票の月給と統計の数字を比べるときに、いちばん間違えやすいところです。
- 入っているもの:基本給、役職手当、残業代、通勤手当、そのほか毎月支払われる手当
- 入っていないもの:賞与(ボーナス)、退職金、年に数回しか出ない一時金
- 引かれる前の金額です:所得税、住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険を引く前
手取りにすると、だいたい8割前後になります。271,400円なら、手取りは21万円から22万円くらいが目安です。扶養している家族の数や住んでいる自治体で変わるので、幅を持たせています。
求人票に「月給23万円」と書いてある場合、そこに何が含まれているかは求人によって違います。基本給だけのこともあれば、みなし残業代が入っていることもある。同じ23万円でも、中身が違えば手取りは変わります。



みなし残業って、書いてない園もあるよね…?



書き方が園によって違います。「月給23万円(固定残業代3万円・20時間分を含む)」のように書いてあれば分かりますが、内訳が書いていない求人もあります。その場合は面接で聞くしかありません。
保育士の給料を平均と比べる前に、年齢を見てください
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
さきほどの271,400円、推定年収396.9万円という数字は、平均年齢38.0歳の人たちの平均です。20代の保育士がこの数字と自分を比べれば、低くて当たり前です。
年齢で分けると、こうなります。
| 年齢 | 推定年収 |
|---|---|
| 20〜24歳 | 313.6万円 |
| 25〜29歳 | 370.1万円 |
| 30〜34歳 | 373.1万円 |
| 35〜39歳 | 393.5万円 |
| 40〜44歳 | 411.1万円 |
| 45〜49歳 | 413.4万円 |
| 50〜54歳 | 407.8万円 |
| 55〜59歳 | 454.2万円 |
22歳で就職して1年目なら、比べる相手は396万円ではなく313万円です。28歳なら370万円。同じ保育士でも、比べる相手が80万円違います。



ずっと平均より低いと思ってた…



私もそうでした。10年働いていましたが、それは20代のあいだです。当時の給料は、この396万円には届いていませんでした。



え、そうなんだ



調べて分かったんです。園が特別に安かったわけではなく、比べていた相手が40歳近い人たちの平均だった、というだけでした。
それなのに、どのサイトを見ても「保育士の平均年収は396万円です」としか書いてありません。その数字を読んだ20代の保育士が、自分は平均以下だと思う。正直なところ、これは書き方の問題だと思っています。
もうひとつ、表を見ると気づくことがあります。25〜29歳から30〜34歳のあいだで、年収が3万円しか増えていません。45〜49歳から50〜54歳では、むしろ5万円下がっています。保育士の給料は、年齢が上がれば自動的に増えるわけではありません。
保育士の給料は、上と下でどれだけ開きますか?
平均は真ん中ではありません。実際にどれくらいの幅があるのかを見ておきます。
国の統計には、給料を低い順に並べたときの位置ごとの金額が出ています。女性の保育士の所定内給与額、つまり残業代を抜いた毎月のお給料です。
| 位置 | 所定内給与額 |
|---|---|
| 下から10%目 | 193,300円 |
| 下から25%目 | 217,400円 |
| 上から25%目 | 291,200円 |
| 上から10%目 | 346,800円 |
読み方はこうです。保育士の半分は、217,400円から291,200円のあいだにいます。この幅から下に外れているなら下から4分の1、上に外れているなら上から4分の1ということになります。
下から10%目が193,300円なので、残業代を抜いて19万円を切っていたら、全体でもかなり低い方です。逆に34万円を超えていれば上位1割に入ります。



うち、22万くらい。真ん中より下ってこと…?



22万円なら下から4分の1の少し上です。ただ、これは残業代を抜いた金額なので、ご自身の給与明細で基本給と固定的な手当だけを足した額と比べてください。
保育士の給料が上がるのは、何年目ですか?
年齢よりも、経験年数の方がはっきり出ます。
| 経験年数 | 推定年収 |
|---|---|
| 0年 | 264.4万円 |
| 1〜4年 | 345万円 |
| 5〜9年 | 366.7万円 |
| 10〜14年 | 384.1万円 |
| 15年以上 | 458.3万円 |
目立つのは最初の段差です。0年から1〜4年で806,000円増えています。1年で年収がこれだけ変わるのは、賞与のためです。
経験0年の保育士の年間賞与は、統計上39,600円しかありません。入職した年は査定の対象期間が短いので、寸志で終わる園が多いということです。2年目からは満額に近い賞与が出るので、そこで一気に上がります。



1年目の冬のボーナス、封筒が薄くてびっくりしたな…



あれは園がケチだったわけではなく、統計を見るかぎり全国的にそうなっています。1年目の賞与の平均は、年間で4万円弱です。
そのあとは、5〜9年で366万円、10〜14年で384万円と、1年あたり4万円ほどのペースで増えていきます。そして15年以上で458万円に跳ねます。
ただし15年以上まで残っているのは、集計された保育士の30.6%だけです。3人に1人しか、そこまで続けていません。
経験年数で手当が付く制度があります
処遇改善等加算という仕組みがあります。国が保育士の給料を上げるために園に出しているお金で、経験年数によって役職に就ける条件が決まっています。令和7年度に加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが一本化され、基礎分・賃金改善分・質の向上分の3つの区分に整理されました。
- おおむね3年以上で、職務分野別リーダー。原則として月額5,000円
- おおむね7年以上で、副主任保育士または専門リーダー。1人4万円を上限に配分
どちらも研修を修了していることが条件です。そして園がこの加算を受け取っていて、実際に配分していることも必要になります。以前は1人以上に月額4万円を配ることが必須でしたが、令和7年度からは上限になり、いくら配るかは園の判断になりました。



3年目だけど、そんな手当もらってないんだけど…



研修を受けていないか、園が加算を受け取っていないか、受け取っていても別の形で配分している可能性があります。給与明細に「処遇改善」の項目があるかを見てください。
処遇改善等加算の要件は、こども家庭庁が公表している内容にもとづいています。令和7年度に一本化されており、自治体や園によって運用が異なります。実際の適用はお勤め先にご確認ください。
都道府県によって、保育士の給料は143万円変わります
同じ保育士でも、働く場所で金額が変わります。
| 都道府県 | 推定年収 | 毎月のお給料 |
|---|---|---|
| 東京都(1位) | 453.5万円 | 315,800円 |
| 京都府(2位) | 452.8万円 | 302,700円 |
| 全国平均 | 396.9万円 | 271,400円 |
| 青森県(46位) | 317.7万円 | 217,700円 |
| 山形県(47位) | 310.3万円 | 234,900円 |
1位と47位で143.2万円の差があります。
この数字を見ると、給料を上げるいちばん確実な方法は、給料の高い都道府県へ移ることです。実際、東京と山形では年収が143万円違います。
ただ、それができる人はほとんどいません。家族がいて、住む場所があって、担任しているクラスがある。給料のために引っ越せる保育士は、そう多くないはずです。
なので現実的な選択肢は、いま住んでいる県の中で条件のいい園に移ることになります。都道府県ごとの相場は別の記事にまとめているので、ご自身の県の数字を確認してみてください。
保育士の給料についてよくある質問
- 保育士の給料に中央値はありますか?
-
国の統計に、中央値そのものは公表されていません。代わりに、低い順に並べたときの下から25%目と上から25%目の金額が出ています。女性の保育士なら217,400円と291,200円で、半分の人がこの範囲に入ります。真ん中を知りたい場合は、この幅で見てください。
- 保育士の平均年収はいくらですか?
-
396.9万円です。毎月のお給料271,400円を12か月分にして、年間賞与712,200円を足した金額になります。ただし平均年齢38.0歳の人たちの平均なので、20代の方はご自身の年齢の欄で比べてください。
- 保育士の手取りはいくらになりますか?
-
平均の271,400円なら、手取りは21万円から22万円くらいが目安です。額面の8割前後になります。扶養している家族の数や自治体で変わります。
- 保育士のパートの時給はいくらですか?
-
全国の平均で1,317円です。1日5.5時間、月16日働いた場合の月収は115,896円になります。パートの時給は都道府県別の統計がないため、全国の数字だけになります。
- 保育士の給料はこの先上がりますか?
-
国は処遇改善の加算を続けていますが、2020年から2023年の4年間で年収が下がった県も2つあります(青森県と岐阜県)。全国で一律に上がっているわけではありません。
まとめ
- 保育士の給料は平均で月271,400円。推定年収は396.9万円
- この数字は平均年齢38.0歳の人たちの平均。20代なら313万〜370万円と比べる
- 保育士の半分は、残業代を抜いて217,400円から291,200円のあいだにいる
- 1年目から2年目で年収が80万円増える。賞与が満額出るようになるため
- 3年で月5,000円、7年で1人4万円を上限とする手当の制度がある(研修の修了が条件。令和7年度から配分は園の判断)
- 都道府県では1位と47位で143万円の差がある
自分の給料が相場と比べてどうなのかは、年齢と経験年数と住んでいる県をそろえてから比べないと分かりません。この記事の数字を、そのまま使ってください。
出典:「令和5年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)を加工して作成/出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)



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