保育士の腰痛は、ある日突然くるものではありませんでした。少しずつ、確実に削られていく感じでした。
抱っこ、おんぶ、床に座る、低い椅子に座る、中腰でおむつを替える。ひとつひとつは短い動作です。でも1日に何十回も繰り返します。
厚生労働省は平成25年に腰痛予防対策の指針を改訂し、適用の範囲を福祉・医療分野等における介護・看護作業全般に広げました。そこには原則として人力による人の抱上げは行わせないと書かれています。
保育の現場でそれをそのまま守るのは難しい。この記事では、何が腰に来ているのかを整理したうえで、続けるために現実的にできることを書きます。
保育士の腰に負担がかかる動作
指針が問題にしているのは、重さそのものより姿勢です。
- 前かがみで人を抱き上げる
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腰から離れた位置で持ち上げるほど、腰にかかる力は大きくなります。膝を曲げずに背中を丸めて抱き上げる形が、いちばん負担が大きい。
- 中腰の姿勢を保つ
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おむつ替え、靴を履かせる、目線を合わせる。中腰は一瞬でも、回数が積み重なります。
- 床に座る、低い椅子に座る
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背もたれのない状態で長く座ると、腰への負担が続きます。保育室の椅子は子どもに合わせた高さなので、大人の腰には向いていません。
- ひねりながら持ち上げる
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抱き上げてから体をひねって移動する動きは、まっすぐ持ち上げるより腰への負担が大きくなります。
保育士抱っこするなって言われても、泣いてる子を放っておけないよ…



そうなんです。だから指針をそのまま持ち込んでも現場は回りません。できるのは、同じ抱っこでも腰への来方を変えることくらいです。
同じ抱っこでも、腰への来方は変えられます
指針が示している考え方を、保育の場面に置き換えます。
腕を伸ばして取りにいくのではなく、自分が一歩近づいてから抱く。腰から離れた位置で持つほど負担が増えるので、距離を縮めるだけで変わります。
背中を丸めて上体だけ倒すと、腰に力が集中します。しゃがむときは膝を使って、腰の角度を変えないようにします。
抱き上げた状態で体をひねらず、足を動かして向きを変えます。
床に座りきりにならず、少し高さのある台に座るだけでも腰の角度が変わります。
これで腰痛が治るという話ではありません。痛みがあるなら、まず医療機関で診てもらってください。ここに書いたのは、あくまで負担のかかり方を減らす方向の話です。
続けられるかどうかは、体力より働き方で決まります
保育士の平均年齢は38.0歳、平均勤続年数は8.5年です。
この8.5年という数字を長いと見るか短いと見るか。全産業の平均と比べれば短い方です。体を使う仕事で、給料が経験年数ほど伸びない。続けにくい条件がそろっています。
| 経験年数 | 所定内給与 | その年数まで残っている人の割合 |
|---|---|---|
| 0年 | 217,000円 | 7.5% |
| 1〜4年 | 236,700円 | 22.5% |
| 5〜9年 | 251,600円 | 23.2% |
| 10〜14年 | 259,800円 | 16.2% |
| 15年以上 | 300,700円 | 30.6% |
15年以上まで続けている人が30.6%います。つまり3割の人は続けられているということです。



その人たちって、体が強いってこと?



そうとは限りません。担任を外れて加配や事務に移った人、パートに切り替えて日数を減らした人、乳児クラスから幼児クラスに移った人。働き方を変えて残っている人が多いです。



……クラスを変えるって、そんなに違うの?



抱き上げる回数がまるで違います。0歳児と5歳児では、腰にかかる負担の種類が変わります。体がきついなら、辞める前に担当を変えられないか相談する手はあります。
- 午睡の時間に休憩が取れているか。休憩時間が名目だけになっていないか
- おむつ替え台や、大人が座れる高さの椅子があるか
- 行事の準備を勤務時間内にやれているか
- 配置基準を満たしたうえで、さらに人を入れているか
求人票には書いていないので、見学のときに保育室を見るしかありません。
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保育士の腰痛についてよくある質問
- 保育士の腰痛はどれくらいの人がなりますか?
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保育士に限った腰痛の統計は公表されていません。ただ厚生労働省は平成25年に腰痛予防対策指針を改訂し、適用対象を福祉・医療分野等における介護・看護作業全般に広げています。人を抱き上げる仕事が腰に負担をかけることは、行政としても前提になっています。
- 腰痛でも続けられる働き方はありますか?
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担当するクラスを変える、パートに切り替えて日数や時間を減らす、加配や事務の担当に移るといった形で続けている人がいます。経験15年以上まで続けている人は全体の30.6%です。
- 腰痛サポーターは使ってもいいですか?
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使用の可否や種類は体の状態によるので、医療機関で相談してください。このサイトでは特定の製品はすすめません。
- 腰痛が理由で辞めるとき、伝え方はどうすればいいですか?
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診断を受けているなら、診断名と医師から言われた制限を伝える形が現実的です。労災にあたる可能性がある場合は、辞める前に確認しておいた方がよいことがあります。
まとめ
- 腰に来るのは重さより姿勢。前かがみ、中腰、ひねりながらの持ち上げが負担になる
- 厚生労働省の指針は福祉・医療分野等の介護・看護作業全般に適用され、原則として人力による人の抱上げは行わせないとしている
- 抱き上げる前に体を近づける、膝を曲げる、ひねらない。この3つで負担のかかり方が変わる
- 経験15年以上まで続けている人は30.6%。多くは働き方を変えて残っている
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出典:「職場における腰痛予防対策指針」(厚生労働省、平成25年6月18日改訂)/出典:「令和5年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)を加工して作成





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